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メンタルヘルスケアの具体的進め方

 メンタルヘルスケアは、5に掲げる4つのケアを継続的かつ計画的に実施することが基本であるが、具体的な推進に当たっては、事業場内の関係者が相互に連携し、以下の取組を積極的に推進することが効果的である。

(1)メンタルヘルスケアを推進するための教育研修・情報提供

  事業者は、4つのケアが適切に実施されるよう、以下に掲げるところにより、それぞれの職務に応じ、メンタルヘルスケアの推進に関する教育研修・情報提供を行うよう努めるものとする。この際には、必要に応じて事業場外資源が実施する研修等への参加についても配慮するものとする。
 なお、労働者や管理監督者に対する教育研修を円滑に実施するため、事業場内に教育研修担当者を計画的に育成することも有効である。

ア 労働者への教育研修・情報提供 事業者は、セルフケアを促進するため、管理監督者を含む全ての労働者に対して、次に掲げる項目等を内容とする教育研修、情報提供を行うものとする。

① メンタルヘルスケアに関する事業場の方針

② ストレス及びメンタルヘルスケアに関する基礎知識

③ セルフケアの重要性及び心の健康問題に対する正しい態度

④ ストレスへの気づき方

⑤ ストレスの予防、軽減及びストレスへの対処の方法

⑥ 自発的な相談の有用性

⑦ 事業場内の相談先及び事業場外資源に関する情報

イ 管理監督者への教育研修・情報提供 事業者は、ラインによるケアを促進するため、管理監督者に対して、次に掲げる項目等を内容とする教育研修、情報提供を行うものとする。

① メンタルヘルスケアに関する事業場の方針

② 職場でメンタルヘルスケアを行う意義

③ ストレス及びメンタルヘルスケアに関する基礎知識

④ 管理監督者の役割及び心の健康問題に対する正しい態度

⑤ 職場環境等の評価及び改善の方法

⑥ 労働者からの相談対応(話の聴き方、情報提供及び助言の方法等)

⑦ 心の健康問題により休業した者の職場復帰への支援の方法

⑧ 事業場内産業保健スタッフ等との連携及びこれを通じた事業場外資源との連携の方法

⑨ セルフケアの方法

⑩ 事業場内の相談先及び事業場外資源に関する情報

⑪ 健康情報を含む労働者の個人情報の保護等

ウ  事業場内産業保健スタッフ等への教育研修・情報提供

  事業者は、事業場内産業保健スタッフ等によるケアを促進するため、事業場内産業保健スタッフ等に対して、次に掲げる項目等を内容とする教育研修、情報提供を行うものとする。
 また、産業医、衛生管理者、事業場内メンタルヘルス推進担当者、保健師等、各事業場内産業保健スタッフ等の職務に応じて専門的な事項を含む教育研修、知識修得等の機会の提供を図るものとする。

① メンタルヘルスケアに関する事業場の方針

② 職場でメンタルヘルスケアを行う意義

③ ストレス及びメンタルヘルスケアに関する基礎知識

④ 事業場内産業保健スタッフ等の役割及び心の健康問題に対する正しい態度

⑤ 職場環境等の評価及び改善の方法

⑥ 労働者からの相談対応(話の聴き方、情報提供及び助言の方法等)

⑦ 職場復帰及び職場適応の支援、指導の方法

⑧ 事業場外資源との連携(ネットワークの形成)の方法

⑨ 教育研修の方法

⑩ 事業場外資源の紹介及び利用勧奨の方法

⑪ 事業場の心の健康づくり計画及び体制づくりの方法

⑫ セルフケアの方法

⑬ ラインによるケアの方法

⑭ 事業場内の相談先及び事業場外資源に関する情報

⑮ 健康情報を含む労働者の個人情報の保護等

(2)職場環境等の把握と改善

  労働者の心の健康には、作業環境、作業方法、労働者の心身の疲労の回復を図るための施設及び設備等、職場生活で必要となる施設及び設備等、労働時間、仕事の量と質、セクシュアルハラスメント等職場内のハラスメントを含む職場の人間関係、職場の組織及び人事労務管理体制、職場の文化や風土等の職場環境等が影響を与えるものであり、職場レイアウト、作業方法、コミュニケーション、職場組織の改善などを通じた職場環境等の改善は、労働者の心の健康の保持増進に効果的であるとされている。このため、事業者は、メンタルヘルス不調の未然防止を図る観点から職場環境等の改善に積極的に取り組むものとする。また、事業者は、衛生委員会等における調査審議や策定した心の健康づくり計画を踏まえ、管理監督者や事業場内産業保健スタッフ等に対し、職場環境等の把握と改善の活動を行いやすい環境を整備するなどの支援を行うものとする。

ア 職場環境等の評価と問題点の把握

  職場環境等を改善するためには、まず、職場環境等を評価し、問題点を把握することが必要である。 このため、事業者は、管理監督者による日常の職場管理や労働者からの意見聴取の結果を通じ、また、事業場内産業保健スタッフ等による職業性ストレス簡易調査票などストレスに関する調査票等を用いた職場環境等の評価結果等を活用して、職場環境等の具体的問題点を把握するものとする。
 特に、事業場内産業保健スタッフ等は中心的役割を果たすものであり、職場巡視による観察、労働者及び管理監督者からの聞き取り調査、ストレスに関する調査票による調査等により、定期的又は必要に応じて、職場内のストレス要因を把握し、評価するものとする。職場環境等を評価するに当たって、職場環境等に関するチェックリスト等を用いることによって、人間関係、職場組織等を含めた評価を行うことも望ましい。

イ 職場環境等の改善

  事業者は、アにより職場環境等を評価し、問題点を把握した上で、職場環境のみならず勤務形態や職場組織の見直し等の様々な観点から職場環境等の改善を行うものとする。具体的には、事業場内産業保健スタッフ等は、職場環境等の評価結果に基づき、管理監督者に対してその改善を助言するとともに、管理監督者と協力しながらその改善を図り、また、管理監督者は、労働者の労働の状況を日常的に把握し、個々の労働者に過度な長時間労働、過重な疲労、心理的負荷、責任等が生じないようにする等、労働者の能力、適性及び職務内容に合わせた配慮を行うことが重要である。
 また、事業者は、その改善の効果を定期的に評価し、効果が不十分な場合には取組方法を見直す等、対策がより効果的なものになるように継続的な取組に努めるものとする。これらの改善を行う際には、必要に応じて、事業場外資源の助言及び支援を求めることが望ましい。 なお、職場環境等の改善に当たっては、労働者の意見を踏まえる必要があり、労働者が参加して行う職場環境等の改善手法等を活用することも有効である。

(3)メンタルヘルス不調への気づきと対応

  メンタルヘルスケアにおいては、ストレス要因の除去又は軽減や労働者のストレス対処などの予防策が重要であるが、これらの措置を実施したにもかかわらず、万一、メンタルヘルス不調に陥る労働者が発生した場合は、その早期発見と適切な対応を図る必要がある。
 このため、事業者は、個人情報の保護に十分留意しつつ、労働者、管理監督者、家族等からの相談に対して適切に対応できる体制を整備するものとする。さらに、相談等により把握した情報を基に、労働者に対して必要な配慮を行うこと、必要に応じて産業医や事業場外の医療機関につないでいくことができるネットワークを整備するよう努めるものとする。

ア 労働者による自発的な相談とセルフチェック

  事業者は、労働者によるメンタルヘルス不調への気づきを促進するため、事業場の実態に応じて、その内部に相談に応ずる体制を整備する、事業場外の相談機関の活用を図る等、労働者が自ら相談を受けられるよう必要な環境整備を行うものとする。
 また、ストレスへの気づきのために、ストレスに関する調査票や情報端末機器等を活用し、随時、セルフチェックを行うことができる機会を提供することも効果的である。

イ  管理監督者、事業場内産業保健スタッフ等による相談対応等

  管理監督者は、日常的に、労働者からの自発的な相談に対応するよう努める必要がある。特に、長時間労働等により疲労の蓄積が認められる労働者、強度の心理的負荷を伴う出来事を経験した労働者、その他特に個別の配慮が必要と思われる労働者から、話を聞き、適切な情報を提供し、必要に応じ事業場内産業保健スタッフ等や事業場外資源への相談や受診を促すよう努めるものとする。 事業場内産業保健スタッフ等は、管理監督者と協力し、労働者の気づきを促して、保健指導、健康相談等を行うとともに、相談等により把握した情報を基に、必要に応じて事業場外の医療機関への相談や受診を促すものとする。また、事業場内産業保健スタッフ等は、管理監督者に対する相談対応、メンタルヘルスケアについても留意する必要がある。
 なお、心身両面にわたる健康保持増進対策(THP)を推進している事業場においては、心理相談を通じて、心の健康に対する労働者の気づきと対処を支援することが重要である。また、運動指導、保健指導等のTHPにおけるその他の指導においても、積極的にストレスや心の健康問題を取り上げることが効果的である。

ウ  労働者個人のメンタルヘルス不調を把握する際の留意点

  事業場内産業保健スタッフ等が労働者個人のメンタルヘルス不調を把握し、本人に対してその結果を提供するとともに、事業者は必要な情報の提供を受けてその状況に対応した必要な配慮を行うことも重要である。ただし、ストレスチェック等を実施し、保健指導等を行うためにその結果を事業者が入手する場合には、7(1)に掲げる労働者本人の同意の上で実施することが必要である。これに加えて、ストレスチェック等を利用して労働者個人のメンタルヘルス不調を早期発見しようとする場合には、質問票等に加えて専門的知識を有する者による面談を実施するなど適切な評価ができる方法によること、事後措置の内容の判断には医師の指導の下、問題を抱える者に対して事業場において事後措置を適切に実施できる体制が存在していること等を前提として実施することが重要である。また、事業者が必要な配慮を行う際には、事業者は、ストレスチェック等により得られた情報を、労働者に対する健康確保上の配慮を行うためにのみ利用し、不適切な利用によって労働者に不利益を生じないように労働者の個人情報の保護について特に留意することが必要である。
 また、労働安全衛生法に基づく健康診断や一定時間を超える長時間労働を行った労働者に対する医師による面接指導等により、労働者のメンタルヘルス不調が認められた場合における、事業場内産業保健スタッフ等のとるべき対応についてあらかじめ明確にしておくことが必要である。

エ 労働者の家族による気づきや支援の促進

  労働者に日常的に接している家族は、労働者がメンタルヘルス不調に陥った際に最初に気づくことが少なくない。また、治療勧奨、休業中、職場復帰時及び職場復帰後のサポートなど、メンタルヘルスケアに大きな役割を果たす。
 このため、事業者は、労働者の家族に対して、ストレスやメンタルヘルスケアに関する基礎知識、事業場のメンタルヘルス相談窓口等の情報を社内報や健康保険組合の広報誌等を通じて提供することが望ましい。また、事業者は、事業場に対して家族から労働者に関する相談があった際には、事業場内産業保健スタッフ等が窓口となって対応する体制を整備するとともに、これを労働者やその家族に周知することが望ましい。

(4)職場復帰における支援 メンタルヘルス不調により休業した労働者が円滑に職場復帰し、就業を継続できるようにするため、事業者は、その労働者に対する支援として、次に掲げる事項を適切に行うものとする。

①  衛生委員会等において調査審議し、産業医等の助言を受けながら職場復帰支援プログラムを策定すること。職場復帰支援プログラムにおいては、休業の開始から通常業務への復帰に至るまでの一連の標準的な流れを明らかにするとともに、それに対応する職場復帰支援の手順、内容及び関係者の役割等について定めること。

②  職場復帰支援プログラムの実施に関する体制や規程の整備を行い、労働者に周知を図ること。

③  職場復帰支援プログラムの実施について、組織的かつ計画的に取り組むこと。

④  労働者の個人情報の保護に十分留意しながら、事業場内産業保健スタッフ等を中心に労働者、管理監督者がお互いに十分な理解と協力を行うとともに、労働者の主治医との連携を図りつつ取り組むこと。

 なお、職場復帰支援における専門的な助言や指導を必要とする場合には、それぞれの役割に応じた事業場外資源を活用することも有効である。

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【 更新日: 2017-4-11

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