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4つのメンタルヘルスケアの推進

 メンタルヘルスケアは、労働者自身がストレスや心の健康について理解し、自らのストレスを予防、軽減するあるいはこれに対処する「セルフケア」、労働者と日常的に接する管理監督者が、心の健康に関して職場環境等の改善や労働者に対する相談対応を行う「ラインによるケア」、事業場内の産業医等事業場内産業保健スタッフ等が、事業場の心の健康づくり対策の提言を行うとともに、その推進を担い、また、労働者及び管理監督者を支援する「事業場内産業保健スタッフ等によるケア」及び事業場外の機関及び専門家を活用し、その支援を受ける「事業場外資源によるケア」の4つのケアが継続的かつ計画的に行われることが重要である。

(1)セルフケア

  心の健康づくりを推進するためには、労働者自身がストレスに気づき、これに対処するための知識、方法を身につけ、それを実施することが重要である。ストレスに気づくためには、労働者がストレス要因に対するストレス反応や心の健康について理解するとともに、自らのストレスや心の健康状態について正しく認識できるようにする必要がある。
 このため、事業者は、労働者に対して、6(1)アに掲げるセルフケアに関する教育研修、情報提供を行い、心の健康に関する理解の普及を図るものとする。また、6(3)に掲げるところにより相談体制の整備を図り、労働者自身が管理監督者や事業場内産業保健スタッフ等に自発的に相談しやすい環境を整えるものとする。ストレスへの気づきのために、6(3)アに掲げるセルフチェックを行う機会を提供することも効果的である。
 また、管理監督者にとってもセルフケアは重要であり、事業者は、セルフケアの対象者として管理監督者も含めるものとする。

(2)ラインによるケア

  管理監督者は、部下である労働者の状況を日常的に把握しており、また、個々の職場における具体的なストレス要因を把握し、その改善を図ることができる立場にあることから、6(2)に掲げる職場環境等の把握と改善、6(3)に掲げる労働者からの相談対応を行うことが必要である。
 このため、事業者は、管理監督者に対して、6(1)イに掲げるラインによるケアに関する教育研修、情報提供を行うものとする。
 なお、業務を一時的なプロジェクト体制で実施する等、通常のラインによるケアが困難な業務形態にある場合には、実務において指揮命令系統の上位にいる者等によりケアが行われる体制を整えるなど、ラインによるケアと同等のケアが確実に実施されるようにするものとする。

(3)事業場内産業保健スタッフ等によるケア

  事業場内産業保健スタッフ等は、セルフケア及びラインによるケアが効果的に実施されるよう、労働者及び管理監督者に対する支援を行うとともに、心の健康づくり計画に基づく具体的なメンタルヘルスケアの実施に関する企画立案、メンタルヘルスに関する個人の健康情報の取扱い、事業場外資源とのネットワークの形成やその窓口となること等、心の健康づくり計画の実施に当たり、中心的な役割を果たすものである。
 このため、事業者は、事業場内産業保健スタッフ等によるケアに関して、次の措置を講じるものとする。

①  6(1)ウに掲げる職務に応じた専門的な事項を含む教育研修、知識修得等の機会の提供を図ること。

② メンタルヘルスケアに関する方針を明示し、実施すべき事項を委嘱又は指示すること。

③  6(3)に掲げる事業場内産業保健スタッフ等が労働者の自発的相談等を受けることができる制度及び体制を、それぞれの事業場内の実態に応じて整えること。

④  産業医等の助言、指導等を得ながら事業場のメンタルヘルスケアの推進の実務を担当する事業場内メンタルヘルス推進担当者を、事業場内産業保健スタッフ等の中から選任するよう努めること。事業場内メンタルヘルス推進担当者としては、衛生管理者等や常勤の保健師等から選任することが望ましいこと。なお、事業場の実情によっては、人事労務管理スタッフから選任することも考えられること。

⑤  一定規模以上の事業場にあっては、事業場内に又は企業内に、心の健康づくり専門スタッフや保健師等を確保し、活用することが望ましいこと。
 なお、事業者は心の健康問題を有する労働者に対する就業上の配慮について、事業場内産業保健スタッフ等に意見を求め、また、これを尊重するものとする。
 メンタルヘルスケアに関するそれぞれの事業場内産業保健スタッフ等の役割は、主として以下のとおりである。

ア 産業医等

  産業医等は、職場環境等の改善、健康教育・健康相談その他労働者の健康の保持増進を図るための措置のうち、医学的専門知識を必要とするものを行うという面から、事業場の心の健康づくり計画の策定に助言、指導等を行い、これに基づく対策の実施状況を把握する。また、専門的な立場から、セルフケア及びラインによるケアを支援し、教育研修の企画及び実施、情報の収集及び提供、助言及び指導等を行う。就業上の配慮が必要な場合には、事業者に必要な意見を述べる。専門的な相談・対応が必要な事例については、事業場外資源との連絡調整に、専門的な立場から関わる。さらに、長時間労働者等に対する面接指導等の実施やメンタルヘルスに関する個人の健康情報の保護についても中心的役割を果たす。

イ 衛生管理者等

  衛生管理者等は、心の健康づくり計画に基づき、産業医等の助言、指導等を踏まえて、具体的な教育研修の企画及び実施、職場環境等の評価と改善、心の健康に関する相談ができる雰囲気や体制づくりを行う。またセルフケア及びラインによるケアを支援し、その実施状況を把握するとともに、産業医等と連携しながら事業場外資源との連絡調整に当たることが効果的である。

ウ 保健師等

  衛生管理者以外の保健師等は、産業医等及び衛生管理者等と協力しながら、セルフケア及びラインによるケアを支援し、教育研修の企画・実施、職場環境等の評価と改善、労働者及び管理監督者からの相談対応、保健指導等に当たる。

エ 心の健康づくり専門スタッフ

  事業場内に心の健康づくり専門スタッフがいる場合には、事業場内産業保健スタッフと協力しながら、教育研修の企画・実施、職場環境等の評価と改善、労働者及び管理監督者からの専門的な相談対応等に当たるとともに、当該スタッフの専門によっては、事業者への専門的立場からの助言等を行うことも有効である。

オ 人事労務管理スタッフ

  人事労務管理スタッフは、管理監督者だけでは解決できない職場配置、人事異動、職場の組織等の人事労務管理が心の健康に及ぼしている具体的な影響を把握し、労働時間等の労働条件の改善及び適正配置に配慮する。

(4)事業場外資源によるケア

  メンタルヘルスケアを行う上では、事業場が抱える問題や求めるサービスに応じて、メンタルヘルスケアに関し専門的な知識を有する各種の事業場外資源の支援を活用することが有効である。また、労働者が相談内容等を事業場に知られることを望まないような場合にも、事業場外資源を活用することが効果的である。

  事業場外資源の活用にあたっては、これに依存することにより事業者がメンタルヘルスケアの推進について主体性を失わないよう留意すべきである。このため、事業者は、メンタルヘルスケアに関する専門的な知識、情報等が必要な場合は、事業場内産業保健スタッフ等が窓口となって、適切な事業場外資源から必要な情報提供や助言を受けるなど円滑な連携を図るよう努めるものとする。また、必要に応じて労働者を速やかに事業場外の医療機関及び地域保健機関に紹介するためのネットワークを日頃から形成しておくものとする。

  特に、小規模事業場においては、8に掲げるとおり、必要に応じて地域産業保健センター等の事業場外資源を活用することが有効である。

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【 更新日: 2017-4-11

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