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基礎的な疫学・統計学の知識

衛生管理者は、労働衛生管理に係るデータを集め、集計し、分析・評価し、衛生管理の基礎資料として役立てる。そのため、統計学疫学の知識が必要とされる。

労働衛生管理に必要なデータ集積、分析のために留意すること(5つ)(答え

データの質、データ分析、正常値と参照値、有所見・有所見率と発生率、疫学と応用

良質なデータとは、信頼できる出所高い精度のもの。

データの分布の代表値とばらつき指標

分布の代表値 平均値 全データの和をデータ数で割った値
中央値 データを大きい(小さい)順で並べたときの中央値
最頻値 データの中で最も多く見られた値
分布のばらつき 分散 値のばらつき程度
標準偏差 分散の平方根。値のばらつき程度
範囲 最大値と最小値

生体から得られた指標の分布は、正規分布となることが多い。ばらつきの程度は、分散標準偏差で表される。集団の比較は、平均値が異なれば集団も異なった特徴を有すると評価されるが、平均値が等しくても分散が異なっていれば、異なった特徴を有する集団と評価される。

データの代表値としてどの指標を用いるかは、データの内容と分布の形によって異なる。

正常値と参照値

正常値とは、健康な状態の人の、人体の生命活動維持に必要な検査項目が、一定の範囲内にあることをいう。

参照値は、健康影響という価値判断から出された値で、実際の人体検査の値からではなく、動物実験疫学調査で、人の健康に影響しない安全な値を基準としている。

有所見、有所見率と発生率

有所見率とは、健康管理統計において「ある時点における検査の有所見者の割合」のことである。

発生率とは「一定期間に有所見が発生した人の割合」のことである。

有所見率と発生率は、異なる指標である。不可逆性の検査項目と可逆性の検査項目、短期間と長期間の検査項目とでは、有所見率と発生率の評価は異なる。有所見率、発生率の大きさを比較、経時的変動を観察すると、作業場の改善点がわかる。

疫学と応用

疫学とは、ある集団における健康事象の分布を調査し、原因を統計学的に追跡し、対策をする方法。

疫学の手順(答え

  1. 疫学の目的の設定
  2. 目的に関係する全ての事象の統計(記述疫学)
  3. 原因の仮説を立てる
  4. 分析疫学(前向き調査=コホート調査)、(後向き調査=症例対照調査)
  5. 因果関係を探る
  6. 対策を考え実施する

事象が多発している否かの客観的判定(答え

標準化死亡比、年齢標準化死亡率などを用いる。

注意を要する場合(答え

発生は少数であっても、稀な疾病の場合

因果関係が成立する条件(5つ)(答え

  1. 時間的先行性(原因となる事象が事前に作用している)
  2. 関係の普遍性(いつでも、どこでもその関係が見られる)
  3. 関係の強さ(量-影響関係、量-反応関係、相対危険度などの指標で測る)
  4. 関係の特異性
  5. 関係の一致性
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【 更新日: 2011-10-22

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