温熱環境
温度感覚を左右する環境条件とは(答え)
気温、湿度、気流、放射熱
温度と湿度が高いと、発汗による体熱放散が妨げられ気温以上に蒸し暑さを感じ、湿度が低いとその逆になる。温度が低いときに湿度が高いと伝導による放熱が増加して寒さが増し、湿度が低いと寒さを強く感じない。
湿度の求め方は、乾球温度と湿球温度から求める。
風があると汗の蒸発が促進され、伝導も増して冷たく感じる。しかし、高温多湿の場合は、身体の表面に接して温度の下がった空気層が風で流され、高温多湿の空気が入ってくるため、風があると蒸し暑く感じる。
放射熱があると、風のないときには、温度計(乾球温度計)が示す以上に暖かさを感じる。
夏期等暑熱時に室内を冷房する場合、外気温との差が大きくなると身体の体温調節機能に支障が生じやすいので、この場合の外気温と室温の差は7℃以内が目安とされている。
温熱指数
実効温度とは(答え)
温度感覚を表す指標として、感覚温度ともいう。気温や湿度は、アスマン通風乾湿計で測定し、気流の測定は熱線風速計を使う。気温華氏t°、湿度100%、無風を基本とし、それと等しい温度感覚を与える状態をt°ETとする。
これには放射熱は考慮されていない。
至適温度とは(答え)
暑くもなく、寒くもない温度感覚を伴う温度。作業強度が強かったり、作業時間が長いときは、至適温度は低くなり、衣服が薄いときは高くなる。又、飲食物、年齢、性別、民族などで異なる。
知的作業 | 60~65°ET |
軽作業 | 55~65°ET |
筋的作業 | 50~62.5°ET |
感覚温度には放射熱が考慮されていない。放射熱の考慮を入れて測るには、乾球温度の変わり黒球温度を用いた修正実効温度を用いる。
WBGT温度とは(答え)
高温環境の評価に用いる、気温、湿度、放射熱を考慮した総合的指標。Wet Bulb Globe Temperatureの頭文字をとったもので、湿球黒球温度ともいう。湿球温度、黒球温度、乾球温度の値から計算する。
屋外の場合の計算方法
WBGT = 0.7 × 湿球温度 + 0.2 × 黒球温度 + 0.1 × 乾球温度
屋内の場合の計算方法
WBGT = 0.7 × 湿球温度 + 0.3 × 黒球温度
日常生活に関する指針
温度基準 (WBGT) | 注意すべき 生活活動の目安 | 注意事項 |
危険 (31℃以上) | すべての生活活動で 起こる危険性 | 高齢者においては安静状態でも発生する危険性が大きい。外出はなるべく避け、室内で涼しい室内に移動する。 |
厳重警戒 (28~31℃) | 外出時は炎天下を避け室内では室温の上昇に注意する。 | |
警戒 (25~28℃) | 中等度以上の生活 活動でおこる危険性 | 運動や激しい作業をする際は定期的に十分に休息を取り入れる。 |
注意 (25℃未満) | 強い生活活動で 起こる危険性 | 一般に危険性は少ないが激しい運動や重労働時に発生する危険性がある。 |
運動に関する指針
気温 (参考) | WBGT 温度 | 熱中症予防運動指針 | |
35℃以上 | 31℃以上 | 運動は 原則中止 | WBGT31℃以上では、特別の場合以外は運動を中止する。特に子供の場合は中止すべき。 |
31~35℃ | 28~31℃ | 厳重警戒 (激しい運動は中止) | WBGT28℃以上では、熱中症の危険性が高いので、激しい運動や持久走など体温が上昇しやすい運動は避ける。運動する場合には、頻繁に休息をとり水分・塩分の補給を行う。体力の低い人、暑さになれていない人は運動中止。 |
28~31℃ | 25~28℃ | 警戒 (積極的に休息) | WBGT25℃以上では、熱中症の危険が増すので、積極的に休息をとり適宜、水分・塩分を補給する。激しい運動では、30分おきくらいに休息をとる。 |
24~28℃ | 21~25℃ | 注意 (積極的に水分補給) | WBGT21℃以上では、熱中症による死亡事故が発生する可能性がある。熱中症の兆候に注意するとともに、運動の合間に積極的に水分・塩分を補給する。 |
24℃未満 | 21℃未満 | ほぼ安全 (適宜水分補給) | WBGT21℃未満では、通常は熱中症の危険は小さいが、適宜水分・塩分の補給は必要である。市民マラソンなどではこの条件でも熱中症が発生するので注意。 |
身体作業強度等に応じたWBGT基準値
区分 | 身体作業強度(代謝率レベル)の例 | WBGT基準値 | |||
熱に順化している人(℃) | 熱に順化していない人(℃) | ||||
0 安静 | ・安静 | 33 | 32 | ||
1 低代謝率 | ・楽な座位 ・軽い手作業(書く、タイピング、描く、縫う、簿記) ・手及び腕の作業(小さいベンチツール、点検、組み立てや軽い材料の区分け) ・腕と足の作業(普通の状態での乗り物の運転、足のスイッチやペダルの操作) ・立位 ・ドリル(小さい部分) ・コイル巻き ・フライス盤(小さい部分) ・小さい電気子巻き ・小さい力の道具の機械 ・ちょっとした歩き(速さ3.5km/h) | 30 | 29 | ||
2 中程度代謝率 | ・継続した頭と腕の作業(くぎ打ち、盛土) ・腕と脚の作業(トラックのオフロード操縦、トラクター及び建設車両) ・腕と胴体の作業(空気ハンマーの作業、トラクター組立て、しっくい塗り、中くらいの重さの材料を断続的に持つ作業、草むしり、草掘り、果物や野菜を摘む) ・軽量な荷車や手押し車を押したり引いたりする ・3.5~5.5km/hの速さで歩く ・鍛造 | 28 | 26 | ||
3 高代謝率 | ・強度の腕と胴体の作業 ・重い材料を運ぶ ・大ハンマー作業 ・草刈り ・シャベルを使う ・のこぎりをひく ・掘る ・硬い木にかんなをかけたりのみで彫る ・5.5~7.5km/hの速さで歩く ・重い荷物の荷車や手押し車を押したり引いたりする ・鋳物を削る ・コンクリートブロックを積む | 気流を感じないとき 25 | 気流を感じるとき 26 | 気流を感じないとき 22 | 気流を感じるとき 23 |
4 極高代謝率 | ・最大速度の速さでとても激しい活動 ・おのを振るう ・激しくシャベルを使ったり掘ったりする ・階段を登る、走る、7km/hより速く歩く | 23 | 25 | 18 | 20 |
TGE指数とは(答え)
高温作業場の評価の一方法。
TGE指数=T(同一人が就業中働く職場の気温)×G(平均黒球温度)×E(平均エネルギー代謝率)
高温作業の適正範囲は、TGE指数で4000まで。そのときの8時間の水分喪失量は、4リットル。
不快指数とは(答え)
不快指数
=0.4×(乾球温度(°F)+湿球温度(°F))+15
=0.72×(乾球温度(°C)+湿球温度(°C))+40.6
アメリカ人では、70までが快適、75で半数が不快、80以上で大部分が不快となるが、日本人の指数はもう少し高めになる。
相対湿度とは(答え)
ある温度における空気中の水蒸気分圧と飽和水蒸気圧との比を百分率で示したもの。乾球温度と湿球温度の温度差から求める。
【 更新日: 2011-10-22】