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発端―総務の宿命か

 わたしが社会人となって配属された部署は、総務部でした。配属されてほどなくして、上司から衛生管理者の資格をとるように言われました。入社したての頃は、それほど忙しくなかったし、上司の命でもあるので、とりあえずの目標と思い、勉強をすることにしました。

 会社では、衛生管理者の試験を受けるために、3日間のセミナーを受講させてくれました。このセミナーでは、第1種衛生管理者の資格をとるために必要な情報を提供する目的で、分厚いテキスト2冊と、試験によく出る箇所を重点的に教えてくれました。セミナーでもらったテキストは、上下巻合わせて1000ページもありました。これを全部覚えなければならないのは大変だなぁと思っているうちに、仕事が忙しくなってきて、途中で勉強が止まってしまいました。特に受験する期限を定められていたわけではなく、上司からも厳しく言われなかったので、後回しにしても構わなさそうだ、と判断したのでした。

 それからしばらくして、会社の内情が徐々にわかってきました。中小企業であれば、当たり前のことかもしれませんが、わたしの勤める会社では、繁忙期には月200時間にも上る残業を行う人もざらにいました。そして、その残業時間を減らす対策もろくにとられていませんでした。ひどい会社になると、それらがすべてサービス残業になるらしいですが、働いた分はすべて支払われるという意味では、ブラックな会社ではないと言えるのでしょうか。

 会社には、2名の衛生管理者の資格を持った人がいました。二人とも役員でした。この過密労働が労働基準法に違反していることは、明らかなので、当時わたしは2名の衛生管理者は何をしているのだろうか、と思っていました。そして、考えは責任論に移りました。

 つまり、この状況で衛生管理者の資格をとった場合、もし誰かが過密労働で最悪亡くなったとしたら、その責任をこちらに押し付けるつもりなのではないか?と勘ぐるようになったのです。経営者が労働環境を改善することが、会社のためになると思っていないことが伝わるような振る舞いや言動を常日頃からしていることも、勘ぐる一因でした。今ではそうは思いませんが、当時は若かったので、そう考えてしまいました。

※もちろん、衛生管理者の責任を問われることはありません。責任は事業主にあるとされています。

 このような理由で、さすがに人の命の責任までは負えない、と思ったわたしは、上司がたまに思い出したように「資格はどうした」と言われても、あやふやに答えて回避するようになっていきました。

 そうこうしているうち数年が過ぎました。そして、ある年の秋に人事が行われ、上司が入れ替わりました。その上司が配属されて、最初に経営者に言われたことが、「衛生管理者の資格をとれ」でした。その上司のほかに、わたしを含め2名が資格をとるようにと言われたのです。このときには、もはや責任論云々はありえないということを認識していたわたしは、再び勉強をすることにしました。

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【 更新日: 2011-10-22

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