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職場における熱中症の予防について

第1 WBGT値(暑さ指数)の活用

1 WBGT値等

 WBGT(Wet-Bulb Globe Temperature:湿球黒球温度(単位:℃))の値は、暑熱環境による熱ストレスの評価を行う暑さ指数(式(1)又は(2)により算出)であり、作業場所に、WBGT測定器を設置するなどにより、WBGT値を求めることが望ましいこと。特に、WBGT予報値、熱中症情報等により、事前にWBGT値が表1-1(PDF:142KB)のWBGT基準値(以下単に「WBGT基準値」という。)を超えることが予想される場合は、WBGT値を作業中に測定するよう努めること。

ア 屋内の場合及び屋外で太陽照射のない場合

WBGT値=0.7×自然湿球温度+0.3×黒球温度 式(1)

イ 屋外で太陽照射のある場合

WBGT値=0.7×自然湿球温度+0.2×黒球温度+0.1×乾球温度 式(2)
 また、WBGT値の測定が行われていない場合においても、気温(乾球温度)及び相対湿度を熱ストレスの評価を行う際の参考にすること。

2 WBGT値に係る留意事項

 表1-2に掲げる衣類を着用して作業を行う場合にあっては、式(1)又は(2)により算出されたWBGT値に、それぞれ表1-2(PDF:60KB)に掲げる補正値を加える必要があること。
 また、WBGT基準値は、既往症がない健康な成年男性を基準に、ばく露されてもほとんどの者が有害な影響を受けないレベルに相当するものとして設定されていることに留意すること。

3 WBGT基準値に基づく評価等

 WBGT値が、WBGT基準値を超え、又は超えるおそれのある場合には、冷房等により当該作業場所のWBGT値の低減を図ること、身体作業強度(代謝率レベル)の低い作業に変更すること、WBGT基準値より低いWBGT値である作業場所での作業に変更することなどの熱中症予防対策を作業の状況等に応じて実施するよう努めること。それでもなお、WBGT基準値を超え、又は超えるおそれのある場合には、第2の熱中症予防対策の徹底を図り、熱中症の発生リスクの低減を図ること。ただし、WBGT基準値を超えない場合であっても、WBGT基準値が前提としている条件に当てはまらないとき又は補正値を考慮したWBGT基準値を算出することができないときは、実際の条件により、WBGT基準値を超え、又は超えるおそれのある場合と同様に、第2の熱中症予防対策の徹底を図らなければならない場合があることに留意すること。
 上記のほか、熱中症を発症するリスクがあるときは、必要に応じて第2の熱中症予防対策を実施することが望ましいこと。

第2 熱中症予防対策

1 作業環境管理

(1)WBGT値の低減等

 次に掲げる措置を講ずることなどにより当該作業場所のWBGT値の低減に努めること。

ア WBGT基準値を超え、又は超えるおそれのある作業場所(以下単に「高温多湿作業場所」という。)においては、発熱体と労働者の間に熱を遮ることのできる遮へい物等を設けること。

イ 屋外の高温多湿作業場所においては、直射日光並びに周囲の壁面及び地面からの照り返しを遮ることができる簡易な屋根等を設けること。

ウ 高温多湿作業場所に適度な通風又は冷房を行うための設備を設けること。また、屋内の高温多湿作業場所における当該設備は、除湿機能があることが望ましいこと。
 なお、通風が悪い高温多湿作業場所での散水については、散水後の湿度の上昇に注意すること。

(2)休憩場所の整備等

 労働者の休憩場所の整備等について、次に掲げる措置を講ずるよう努めること。

ア 高温多湿作業場所の近隣に冷房を備えた休憩場所又は日陰等の涼しい休憩場所を設けること。また、当該休憩場所は臥床することのできる広さを確保すること。

イ 高温多湿作業場所又はその近隣に氷、冷たいおしぼり、水風呂、シャワー等の身体を適度に冷やすことのできる物品及び設備を設けること。

ウ 水分及び塩分の補給を定期的かつ容易に行えることができるよう高温多湿作業場所に飲料水の備付け等を行うこと。

2 作業管理

(1)作業時間の短縮等

 作業の休止時間及び休憩時間を確保し、高温多湿作業場所の作業を連続して行う時間を短縮すること、身体作業強度(代謝率レベル)が高い作業を避けること、作業場所を変更することなどの熱中症予防対策を、作業の状況等に応じて実施するよう努めること。

(2)熱への順化

 高温多湿作業場所において労働者を作業に従事させる場合には、熱への順化(熱に慣れ当該環境に適応すること)の有無が、熱中症の発生リスクに大きく影響することを踏まえて、計画的に、熱への順化期間を設けることが望ましいこと。特に、梅雨から夏季になる時期において、気温等が急に上昇した高温多湿作業場所で作業を行う場合、新たに当該作業を行う場合、また、長期間、当該作業場所での作業から離れ、その後再び当該作業を行う場合等においては、通常、労働者は熱に順化していないことに留意が必要であること。

(3)水分及び塩分の摂取

 自覚症状以上に脱水状態が進行していることがあること等に留意の上、自覚症状の有無にかかわらず、水分及び塩分の作業前後の摂取及び作業中の定期的な摂取を指導するとともに、労働者の水分及び塩分の摂取を確認するための表の作成、作業中の巡視における確認などにより、定期的な水分及び塩分の摂取の徹底を図ること。特に、加齢や疾患によって脱水状態であっても自覚症状に乏しい場合があることに留意すること。
 なお、塩分等の摂取が制限される疾患を有する労働者については、主治医、産業医等に相談させること。

(4)服装等

 熱を吸収し、又は保熱しやすい服装は避け、透湿性及び通気性の良い服装を着用させること。また、これらの機能を持つ身体を冷却する服の着用も望ましいこと。
 なお、直射日光下では通気性の良い帽子等を着用させること。

(5)作業中の巡視

 定期的な水分及び塩分の摂取に係る確認を行うとともに、労働者の健康状態を確認し、熱中症を疑わせる兆候が表れた場合において速やかな作業の中断その他必要な措置を講ずること等を目的に、高温多湿作業場所の作業中は巡視を頻繁に行うこと。

3 健康管理

(1)健康診断結果に基づく対応等

 労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号)第43条、第44条及び第45条に基づく健康診断の項目には、糖尿病、高血圧症、心疾患、腎不全等の熱中症の発症に影響を与えるおそれのある疾患と密接に関係した血糖検査、尿検査、血圧の測定、既往歴の調査等が含まれていること及び労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)第66条の4及び第66条の5に基づき、異常所見があると診断された場合には医師等の意見を聴き、当該意見を勘案して、必要があると認めるときは、事業者は、就業場所の変更、作業の転換等の適切な措置を講ずることが義務付けられていることに留意の上、これらの徹底を図ること。
 また、熱中症の発症に影響を与えるおそれのある疾患の治療中等の労働者については、事業者は、高温多湿作業場所における作業の可否、当該作業を行う場合の留意事項等について産業医、主治医等の意見を勘案して、必要に応じて、就業場所の変更、作業の転換等の適切な措置を講ずること。

(2)日常の健康管理等

 高温多湿作業場所で作業を行う労働者については、睡眠不足、体調不良、前日等の飲酒、朝食の未摂取等が熱中症の発症に影響を与えるおそれがあることに留意の上、日常の健康管理について指導を行うとともに、必要に応じ健康相談を行うこと。これを含め、労働安全衛生法第69条に基づき健康の保持増進のための措置に取り組むよう努めること。
 さらに、熱中症の発症に影響を与えるおそれのある疾患の治療中等である場合は、熱中症を予防するための対応が必要であることを労働者に対して教示するとともに、労働者が主治医等から熱中症を予防するための対応が必要とされた場合又は労働者が熱中症を予防するための対応が必要となる可能性があると判断した場合は、事業者に申し出るよう指導すること。

(3)労働者の健康状態の確認

 作業開始前に労働者の健康状態を確認すること。
 作業中は巡視を頻繁に行い、声をかけるなどして労働者の健康状態を確認すること。
 また、複数の労働者による作業においては、労働者にお互いの健康状態について留意させること。

(4)身体の状況の確認

 休憩場所等に体温計、体重計等を備え、必要に応じて、体温、体重その他の身体の状況を確認できるようにすることが望ましいこと。

4 労働衛生教育

 労働者を高温多湿作業場所において作業に従事させる場合には、適切な作業管理、労働者自身による健康管理等が重要であることから、作業を管理する者及び労働者に対して、あらかじめ次の事項について労働衛生教育を行うこと。

(1)熱中症の症状
(2)熱中症の予防方法
(3)緊急時の救急処置
(4)熱中症の事例
 なお、(2)の事項には、1から4までの熱中症予防対策が含まれること。

5 救急処置

(1)緊急連絡網の作成及び周知

 労働者を高温多湿作業場所において作業に従事させる場合には、労働者の熱中症の発症に備え、あらかじめ、病院、診療所等の所在地及び連絡先を把握するとともに、緊急連絡網を作成し、関係者に周知すること。

(2)救急措置

 熱中症を疑わせる症状が現われた場合は、救急処置として涼しい場所で身体を冷し、水分及び塩分の摂取等を行うこと。また、必要に応じ、救急隊を要請し、又は医師の診察を受けさせること。

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【 更新日: 2017-4-11

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